私は大勢の人とお話するのは正直苦手です。学会で多くの知り合いにお会いするときには精一杯愛嬌を振る舞います。基本的には自分の研究室でネチネチ考え事する方が好きだし、これは怒られるけど人に認められなくても自分できちんとした基準の元で研究はしてるし、人の判断なんかは必要ないとも思っています。研究するには、個人的に私一人にたっぷりの時間をくれて、私の欲するところで人の意見を聞けばありがたいと思っています。多くの研究者はそう思っていると私は思っています。ただ、実験研究で大型施設を動かす必要がある場合にはチームとしての共同活動は必要だし、そのチームの能力が個の能力を凌駕してすばらしい成果をあげることはとても認識しています。だけど、理論は別ですよ。チーム組んでなんかやるなんて気持ち悪いし、なんか集まってクソみたいなミーティングやってるのバカだと正直思っちゃいますよ(それは言い過ぎです)。 それは置いておいても、学会で人的交流は何にも代えがたい貴重なものです。私には役に立たなくて、周りを見ていると、このかけがえのない貴重な体験を奪うものがあるなら100%のエフォートで反対すると。。。あらためて...
Read More研究発表
秋の日本物理学会2024
9月16日から日本物理学会があります。今回の登録は以下のとおりです。今回の会場は北海道大学ですが、私の物理学会デビューはM1の秋の北海道大学でした。もうめちゃくちゃ緊張して、胃が引っくり返りそうになっていたことを覚えています。 学会終わったら、またレポートを書いてみたい。。。ざっくり書いてみた。こちら。 講演番号タイトル著者所属領域18pS105-2機械学習と中性子非弾性散乱を用いたKCu4P3O12の研究長谷正司A, 田村亮A, アンドレアスデニA, 福島孝治B, 浅井晋一郎C, 益田隆嗣C, 伊藤晋一D物材機構A, 東大総合B, 東大物性研C, 高エ研D領域316pE311-6±J イジングスピングラスにおけるエンタングルメント・エントロピーの低温極限大島巧A, 福島孝治A, B東大院総合A, 東大先進B領域1116pE311-7スピングラスモデルのカップリング時間について福島孝治, Werner KrauthA東大総合, ENS ParisA領域1116pE311-9Simulated temperingとWang-Landau法を組み合わせた効率的な自由エネルギー...
Read More荒井くんの行列積の研究がISSAC2024に採択・発表
行き詰まったら、一度戻って考え直します 荒井くんと市川くんの行列積の掛け算最小記録論文がThe International Symposium on Symbolic and Algebraic Computation (ISSAC) に採択されて、荒井くんが口頭発表をしてきました。1988年から毎年開催されている由緒正しい研究会です。Yamato Arai, Yuma Ichikawa, and Koji Hukushima“Adaptive Flip Graph Algorithm for Matrix Multiplication,”ISSAC ’24: Proceedings of the 2024 International Symposium on Symbolic and Algebraic Computation, July 2024, Pages 292 – 298 統計物理学の研究室としては主戦場ではないこともあり、ISSACはよく知らない会議ですが、土台とな...
Read More長野くん論文がJSTATに掲載!
馬蹄型事前分布によるスパース推定の統計力学的研究 2023年3月に卒業した長野くんの研究が論文として出版されました。次の二つの研究論文が発表されました。 Phase transition in compressed sensing with horseshoe priorYasushi Nagano and Koji Hukushima,Phys. Rev. E 107, 034126 – Published 17 March 2023 Effect of global shrinkage parameter of horseshoe prior in compressed sensingYasushi Nagano and Koji Hukushima,J. Stat. Mech. (2024) 053402 すぐに出版されると思ったのですが、そうはいかず、この解説もなかなか公開できませんでした。我々の問題ではなかったので、ちょっともやもやしますが… さて、長野くんの研究はスパース推定と呼ばれる推定問題に対する馬蹄型事前分布の方法という、ちょっ...
Read More市川くんの研究がAISTATS2024に採択・発表
Learning Dynamics in Linear VAE: Posterior Collapse Threshold, Superfluous Latent Space Pitfalls, and Speedup with KL Annealing 市川くんの研究が、The 27th International Conference on Artificial Intelligence and Statistics (AISTATS)に採択され、5月2日から4日に開催の会議で発表してきました,。当研究室としては、機械学習などのトップカンファレンスには縁がなかったわけです(物理の分野にはカンファレス文化はないのでね)が、市川くんが積極的に応募して、採択が叶いました。論文はこちらからも見られます。Learning Dynamics in Linear VAE: Posterior Collapse Threshold, Superfluous Latent Space Pitfalls, and Speedup with KL AnnealingYuma Ichi...
Read More土手さんのVertex Cover論文がPhysical Review Eに
Effect of constraint relaxation on the minimum vertex cover problem in random graphs Aki Dote and Koji Hukushima,“Effect of constraint relaxation on the minimum vertex cover problem in random graphs”,Phys. Rev. E 109, 044304 – Published 5 April 2024https://doi.org/10.1103/PhysRevE.109.044304 これは、この3月に卒業した土手さんの研究成果です。例によって周辺解説をします。 最適化問題は統計力学から見ると絶対零度極限に相当するので、熱力学極限での最適化問題の性質はFu-Anderson以来多くの統計力学的研究があります(こういうところにも出てくるP.W.Andersonはすごい)。Kirkpatrick-Selmanがランダム化された制約充足問題であるrandom SA...
Read More春の日本物理学会2024
とりあえず3月18日から日本物理学会です。今回はオンライン開催です。基本路線は年1はオンラインで年1は対面開催のようですが、これは学会全体でのアンケート結果を受けて理事会判断であったかと認識しています。自分が領域11の代表だった頃にMLを通じて一度アンケートを取ったことがありますが、大きな分かれはなかったです。オンライン開催には賛成派と反対派があり、双方の意見、というかその背景は理解できます。やはり、対面の会議は重要で、特に若い人にとってはかけがえのないものであることに意見の相違はないように思います。 さて、今回の研究室の発表は以下のとおりです。 講演番号登録番号タイトル著者所属領域18pL2-92067対称性を活かした温度拡張貪欲アルゴリズムによる行列積問題の新規解法荒井大和A, 市川祐馬B, C, 福島孝治B, D東大教養統合自然A, 東大院総合B, 富士通人工知能研C, 東大先進D領域1119aL1-61102ブラウン回路による加算器の計算完了時間の数値解析岡嶋航太A, 福島孝治A, B東大院総文A, 東大先進B領域1120aL1-51338レプリカ法による変分オー...
Read More中西くんのクロマチンモデルの論文がPhysical Review Eに出版
Emergence of Compact Disordered Phase in a Polmer Potts Model Emergence of compact disordered phase in a polymer Potts modelRyo Nakanishi and Koji HukushimaPhys. Rev. E 109, 014405 – Published 29 January 2024https://doi-org.utokyo.idm.oclc.org/10.1103/PhysRevE.109.014405 最近になってクロマチンの凝縮状態を表す統計力学モデルとしてポリマーポッツモデルが提案され研究されています。この論文は、中西くんが行ったポリマーポッツモデルの相転移に関する研究です。私自身は高分子については基本的な教科書、土井先生の昔の方やde Gennesを読んだくらいで深くは知らないし、クロマチンもヒストンもどっち向いてるか全く知らない状態で、おおよそ一年くらいかけて中西くんにレクチャーしてもらってきました。最近の論文もたくさん解説...
Read More行列積問題の記録更新論文
Faster Matrix Multiplication: Unveiling Insights from Strassen to FBHHRBNRSSSHK, Continuing with KM, and Advancing to AIH 普段はプレプリントの段階ではあまり研究公開の話はしないのですが、今回だけはちょっと特別とします。たぶんプレスリリースとかもしないだろうし、でも滅多にない世界記録更新した研究なので、少し経緯をここで解説します。 現在、卒業研究で受け入れている荒井くんの研究成果をプレプリントとして公開しました。Adaptive Flip Graph Algorithm for Matrix MultiplicationYamato Arai, Yuma Ichikawa, Koji HukushimaarXiv:2312.16960 昨年、2022年10月に話題になったNature論文がこれです。Discovering faster matrix multiplication algorithms with reinforcement lea...
Read More吉山くんのテンソルくりこみ群の論文がPhysical Review Eに掲載
吉山くんのテンソルくりこみ群による 古典フレストレート系の研究 今年の3月に卒業した吉山くんのテンソルネットワークくりこみ群を古典フラストレート系に応用した力作論文がPhysical Review Eに掲載されました。 https://journals.aps.org/pre/abstract/10.1103/PhysRevE.108.054124https://arxiv.org/abs/2303.07733 ArXiv版からはいろいろ修正されているので、出版論文の方をご覧ください。 この論文ではテンソルくりこみ群の方法を用いて、もっとも単純な古典フラストレート系の一つであるJ1J2イジング模型と呼ばれる統計力学モデルの相転移を調べています。この模型の絶対0度の秩序構造は自明にわかっていますので、自明でないところは有限温度でおこる相転移と言えます。これまでに長い研究で、多くのことはわかってきていて、例えば、この模型のJ2が大きい領域では二次相転移がおきて、その際の臨界指数が相互作用パラメータに陽に依存する独特な普遍性クラスに属することが示唆されたりしてい...
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