春の日本物理学会2024

とりあえず3月18日から日本物理学会です。
今回はオンライン開催です。基本路線は年1はオンラインで年1は対面開催のようですが、これは学会全体でのアンケート結果を受けて理事会判断であったかと認識しています。自分が領域11の代表だった頃にMLを通じて一度アンケートを取ったことがありますが、大きな分かれはなかったです。オンライン開催には賛成派と反対派があり、双方の意見、というかその背景は理解できます。やはり、対面の会議は重要で、特に若い人にとってはかけがえのないものであることに意見の相違はないように思います。

さて、今回の研究室の発表は以下のとおりです。

講演番号登録番号タイトル著者所属領域
18pL2-92067対称性を活かした温度拡張貪欲アルゴリズムによる行列積問題の新規解法荒井大和A, 市川祐馬B, C, 福島孝治B, D東大教養統合自然A, 東大院総合B, 富士通人工知能研C, 東大先進D領域11
19aL1-6
1102ブラウン回路による加算器の計算完了時間の数値解析岡嶋航太A, 福島孝治A, B東大院総文A, 東大先進B領域11
20aL1-51338レプリカ法による変分オートエンコーダの学習ダイナミクスにおける最適解への到達可能性市川佑馬A, B, 福島孝治A, C東大院総合A, 富士通人工知能研B, 東大先進C領域11
21aL1-21685最小頂点被覆問題へのエバネッセント場補正土手暁A, C, 福島孝治A, B東大院総合文化A, 東大先進B, 富士通C領域11
21aL1-8989リフテッド・シミュレーテッド・テンパリングについて福島孝治, 西川宜彦A東大総合, 北里大理A領域11
20pM1-4943結合分子による Polymer Collapse のクラスターダイナミクス中西亮A, 福島孝治A, B東大院総文A, 東大先進B領域12

この物理学会では、研究室の出身者である西川くんが物理学会若手奨励賞を受賞して、その記念講演がありました。ガラスの統計力学的研究を領域11でとったことの意味は個人的にはとても嬉しく思っていて、記念講演もそのとおりのものでした。少ししびれましたよ。統計力学の王道的というと怒られるかもしれませんが、そんな講演でした。この内容を領域12だったらどう受け止められるのかは気になるところです。むしろ、ガラスの何に切り込んだことになるのか?というツッコミは普通にありえるでしょうね。ガラス転移を記述するモデルとガラスを記述するモデルの持つべき性質は何かとか考えると普通に難しいし、平衡統計力学から迫れるところはどこかということもあるし、ダイナミクスをどういれるかとか、まあ普通に難しかったわけだし、難しいのだと思う。何も考えずに多分散系のLJ粒子系でいいじゃんとなる気分もわかるようなわからないような。

私が本当にガラスに興味を持つようになったのは、駒場にいらした佐々さんの影響が大きかったと思う。統計力学の問題としてどのような理論であるべきかという視点は大事な一方で、ガラスの問題として何に注目するのかは難しい。相転移の問題と考えたときに、果たして知られている相転移論からどの部分がはみ出ていて、どこが真にガラス転移の特徴なのかは明らかにしたいと思っている。西川くんの講演はそれに迫る大きな一歩と感じました。

今回の学会は外国の出張先からの参加で、この意味でオンラインは助かったけど、夜中に物理学会で、昼間はこちらで仕事をしているとやっぱり24時間は働けないのでね。。。