研究室の強みってなんですか?

研究室訪問に来た学生さんが帰り際に上記の質問をしてきた。 「そんなものはなんにもないなー」 ちょっと考えて、そう答えた。学生さんからすれば、研究室を選ぶ段階では貴重な情報だし、素直な質問だと思う。ただ、意表をつかれた質問だったし、本当に何もない気がしたから、素直に回答したわけである。 実験の研究室なら、世界でここにしかできない実験はあるかもしれないし、理論の研究室でも、世界でこんな解析できるのはここしかないというのもあるかもしれない。それに相当するものは福島研にはない。研究室が一丸となって、なにかの問題を解決することはない。私がビッグイシューを提示して、それにみんなでアタックするということもない。私の研究テーマの一部分が学生のテーマになることもまずない。ただ、全員が「統計物理学」の研究を行っていて、互いに緩やかにつながっている。だから、福島研は「〇〇がめちゃくちゃ強い」ということはありえない。研究室の主宰としては失格なのかもしれないね。 □□をやるならA先生は強いねとか、△△の分野はB先生がいいねとか、いろいろとコメントはできる。でも、それって、研究室ではなく...
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ぼくが数値計算をするわけ

身近に速いコンピューターが溢れていて,比較的簡単に数値計算ができるようになって久しい.PythonやJuliaなどのスクリプト言語もライブラリーが充実していてソフトの発展も素晴らしい.こういう環境は自分が学生のときとは比べ物にならない.研究における数値計算の役割も変わってきているのかも知れない.その分析は自分の中では十分できていないが,自分自身がなぜ数値計算をするのかの理由は昔から変わっていない.一言では説明できないし,研究室紹介などで説明するのも面倒なので一度書き残しておこうと思う.昔話が多くなりそうだが,興味のある方は目を通してもらって,感想を聞かせてくれると嬉しい. はじめに動機を 「数値計算には興味はない.自分は解析的な研究をしたいです」という学生さんがよく現れる.自分の興味が明確になっていて素晴らしい.もう私から何もアドバイスもないので,それ以上話すことはない.興味の持ち方は人それぞれなので,私の興味を押し売りするつもりは毛頭ない.ただ,私の思考回路を少し覗いてもらうのも悪くはないかな...というのが,この投稿の動機の一つでもある. 「数値計算に興味あって...
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中石くんの論文がPhysical Review Reseachに

Random Language Modelに相転移がないこと 中石くんのRandom Language Modelに関する論文が掲載されました。Absence of phase transition in random language modelKai Nakaishi and Koji HukushimaPhys. Rev. Research 4, 023156 – Published 27 May 2022 研究内容はこちらにもあります。【研究成果】言語と非言語の境界は存在するか? 〜自然言語の数理モデルに相転移がないことを証明〜 ちょっと上の解説とは異なる視点でこの論文の背景を説明してみたい。一般向けの説明は上にあるのでここは気にしないでやや専門的でマニアックな話しになる。 文責: 福島孝治 個人的には2019年は自分自身の研究とは関係ないところで印象的なできごとがあった。多方面で話題になったかもしれないが、2019年は「神」が生まれて、「言語」が生まれたと感じた年だった。神論文は、これである。``Complex societies...
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プレプリント@ArXiv

市川くんと長野くんの研究がそれぞれプレプリントとして公開しました。 Statistical-mechanical study of deep Boltzmann machine given weight parameters after training by singular value decompositionY Ichikawa, K HukushimaarXiv preprint arXiv:2205.01272深層ボルツマンマシンの統計力学的な研究です。すでに学習は終わっているとしたときに、重みが特異値分解で表されていると仮定しているところが特徴的です。その特異ベクトルをランダム化したときの典型的な性質をランダム系の統計力学を用いて相図を導きました。特異値はパラメータとして扱うので、…つづきは後ほど。 Phase transition in compressed sensing with horseshoe priorY Nagano, K HukushimaarXiv preprint arXiv:2205.08222馬蹄形事前分布を用いた線形回帰の統計力学...
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2022年メンバー表更新

3月に市川佑馬さんと中石海さんが修士課程を終了しました。その際に、お二人共に広域科学専攻賞を受賞されました。 市川佑馬学習を反映した重みパラメータを持つ深層ボルツマンマシンの統計力学的解析中石海確率化された句構造文法の統計力学 4月からはあらたに、岡嶋航太さんと金光航平さんが修士1年生として加入。さらに、金子研から市川航平さんと板尾健司さんが加わり、これが今年度のフルラインナップです。 http://hukushimalab.c.u-tokyo.ac.jp/member-page/ 史上最大でしょうか。。。
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2022年3月日本物理学会

残念ながら今回も対面での開催が叶いませんでした.これでオンラインが四回続きましたか. 研究室のみなさんは以下のように発表します. 私以外は順調に研究が進んでいます.このラインナップをみて研究室の特徴がでていると思います.何をやっているのかわからないけど,統計物理学の研究をしている研究室です.余裕があれば学会レポートも記してみたい.私は計算が全然進まなかったので一回スキップしちゃいました.次回には面白い相図をお見せしたいと思っています. 3月12日Jrセッション 物理学会の本会に先立ち,前の週の土曜日にJrセッションがあった.審査委員と座長として参加した.このJrセッションの運営は年々充実してきて感心させられる.委員長の松川先生とスタッフのご尽力の賜物である.それで,このJrセッションを本会と区別した運営指針にするかどうかはいつも議論になるところだと思う.国内でも多くの高校生の研究発表会が開催されている.それらと同様でいいのだが,せっかく物理学会でやっているのだから,本会と同じ意識でいいのではないか?という考え方がある.つまり,「よく頑張りましたねー」的...
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2021年メンバー

3月末をもって,助教の中西さんとPDの池田晴國さんが転出になりました.中西さんは同志社大学の准教授へ,池田さんは学習院の助教へのご栄転です.それから,修士課程の伊藤さんと松原くんが卒業しました. 新天地でのますますの活躍を祈っています. 4月からは新たに崎下くんと土手さんが博士課程にやってきました.
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2021年3月物理学会@オンライン

日本物理学会が開催.オンサイトなら駒場で開催される予定であったが,今回もオンライン.みなさんオンラインに慣れてきて,大きなトラブルなく進行.ちょっとしたトラブルはあちこちで. 研究室のメンバーの発表は以下のとおり. 学会のポスターセッションと廊下問題は改善されず,何かコメントできる機会があると思うのでポスターセッションの改善だけはなんとかいたい.このままではポスター発表する人はいなくなると思われる.実際に,領域11での前回のエントリー数は68で,今回は36.淡い期待でのエントリーだったと思うが,今回の様子では次回は10を切っても文句は言えない.改善だけでなく,改善したことを周知しないといけない. 廊下問題は,Zoomではカバーしきれない雑談スペースの確保の必要性を言っていて,SpatialChatやGather.townなどの空間型オンラインツールの設置である程度改善できると思う.学会発表の延長戦は廊下や昼休みや夜セッションで行われるので,絶対に必要.一方で,オンラインだと発表後にコチャでコメントをもらうことはリアルにはない面白みではある.チャットは込み入っ...
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2021スタート

新年あけました.昨年のここは途中で失速しましたが,今年はもうちょっとコメントするようにします.昨年はちょろっと動画配信したりしましたが,もっと積極的に情報発信をしたいものです.少なくとも論文の解説は書くべきだと思っています. オンラインで多くのことが行われるようになって,世界の距離が縮まってオンラインのセミナーが身近になったことはとてもよいことでした.研究会も議論をする術も徐々に確立してきているように感じています.先月の物性研でのポスターセッションはブレークアウトセッションを使って,個部屋毎にプレゼンターと議論することができました.久しぶりに研究室以外の若手とおしゃべりができて刺激をもらいました.毎年行われる千葉大学の高校生理科発表会の通常開催は中止になりましたが,先週に動画とポスターの掲示をみて,チャットツールで質疑をする形で行われました.目を見て議論するわけではないので,ツッコミ強度の調整は難しいですが,できるだけ遠慮しないように書き込みました.やはり,おしゃべりや議論は言葉だけでするわけではなくて,表情や視線も情報を持っているのでね. あとは,顔出しでおしゃべりでき...
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吉山くんのテンソルくりこみ群の論文が公開

テンソルくりこみ群による格子ガラス模型の相転移研究 Higher-Order Tensor Renormalization Group Approach to Lattice Glass ModelKota Yoshiyama, and Koji HukushimaJ. Phys. Soc. Jpn. 89, 104003 (2020) いろいろこの論文の解説を書きたい...またのちほど.
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