馬蹄型事前分布によるスパース推定の統計力学的研究 2023年3月に卒業した長野くんの研究が論文として出版されました。次の二つの研究論文が発表されました。 Phase transition in compressed sensing with horseshoe priorYasushi Nagano and Koji Hukushima,Phys. Rev. E 107, 034126 – Published 17 March 2023 Effect of global shrinkage parameter of horseshoe prior in compressed sensingYasushi Nagano and Koji Hukushima,J. Stat. Mech. (2024) 053402 すぐに出版されると思ったのですが、そうはいかず、この解説もなかなか公開できませんでした。我々の問題ではなかったので、ちょっともやもやしますが… さて、長野くんの研究はスパース推定と呼ばれる推定問題に対する馬蹄型事前分布の方法という、ちょっ...
Read More相転移
土手さんのVertex Cover論文がPhysical Review Eに
Effect of constraint relaxation on the minimum vertex cover problem in random graphs Aki Dote and Koji Hukushima,“Effect of constraint relaxation on the minimum vertex cover problem in random graphs”,Phys. Rev. E 109, 044304 – Published 5 April 2024https://doi.org/10.1103/PhysRevE.109.044304 これは、この3月に卒業した土手さんの研究成果です。例によって周辺解説をします。 最適化問題は統計力学から見ると絶対零度極限に相当するので、熱力学極限での最適化問題の性質はFu-Anderson以来多くの統計力学的研究があります(こういうところにも出てくるP.W.Andersonはすごい)。Kirkpatrick-Selmanがランダム化された制約充足問題であるrandom SA...
Read More中西くんのクロマチンモデルの論文がPhysical Review Eに出版
Emergence of Compact Disordered Phase in a Polmer Potts Model Emergence of compact disordered phase in a polymer Potts modelRyo Nakanishi and Koji HukushimaPhys. Rev. E 109, 014405 – Published 29 January 2024https://doi-org.utokyo.idm.oclc.org/10.1103/PhysRevE.109.014405 最近になってクロマチンの凝縮状態を表す統計力学モデルとしてポリマーポッツモデルが提案され研究されています。この論文は、中西くんが行ったポリマーポッツモデルの相転移に関する研究です。私自身は高分子については基本的な教科書、土井先生の昔の方やde Gennesを読んだくらいで深くは知らないし、クロマチンもヒストンもどっち向いてるか全く知らない状態で、おおよそ一年くらいかけて中西くんにレクチャーしてもらってきました。最近の論文もたくさん解説...
Read More吉山くんのテンソルくりこみ群の論文がPhysical Review Eに掲載
吉山くんのテンソルくりこみ群による 古典フレストレート系の研究 今年の3月に卒業した吉山くんのテンソルネットワークくりこみ群を古典フラストレート系に応用した力作論文がPhysical Review Eに掲載されました。 https://journals.aps.org/pre/abstract/10.1103/PhysRevE.108.054124https://arxiv.org/abs/2303.07733 ArXiv版からはいろいろ修正されているので、出版論文の方をご覧ください。 この論文ではテンソルくりこみ群の方法を用いて、もっとも単純な古典フラストレート系の一つであるJ1J2イジング模型と呼ばれる統計力学モデルの相転移を調べています。この模型の絶対0度の秩序構造は自明にわかっていますので、自明でないところは有限温度でおこる相転移と言えます。これまでに長い研究で、多くのことはわかってきていて、例えば、この模型のJ2が大きい領域では二次相転移がおきて、その際の臨界指数が相互作用パラメータに陽に依存する独特な普遍性クラスに属することが示唆されたりしてい...
Read More市川くんの論文がJournal of Physical Society of Japan誌に掲載!
Deep Boltzmann Machineの統計力学的研究 市川佑馬くんのDeep Boltzmann Machineの論文が掲載されました。Statistical-mechanical Study of Deep Boltzmann Machine Given Weight Parameters after Training by Singular Value DecompositionJ. Phys. Soc. Jpn. 91, 114001 (2022) https://doi.org/10.7566/JPSJ.91.114001 機械学習の理論的研究は昔から調べられていて、さまざまなアプローチがある。統計力学という物理学のアプローチも昔からある。例えば、H. Sompolinsky, N. Tishby, and H. S. Seung, Physical Review Letters 65, 1683 (1993)などである。もっと前からあるかもしれないし、E.Gardnerを挙げるべきかもしれない。いずれにしても、この方向性は、特定...
Read More中石くんの論文がPhysical Review Reseachに
Random Language Modelに相転移がないこと 中石くんのRandom Language Modelに関する論文が掲載されました。Absence of phase transition in random language modelKai Nakaishi and Koji HukushimaPhys. Rev. Research 4, 023156 – Published 27 May 2022 研究内容はこちらにもあります。【研究成果】言語と非言語の境界は存在するか? 〜自然言語の数理モデルに相転移がないことを証明〜 ちょっと上の解説とは異なる視点でこの論文の背景を説明してみたい。一般向けの説明は上にあるのでここは気にしないでやや専門的でマニアックな話しになる。 文責: 福島孝治 個人的には2019年は自分自身の研究とは関係ないところで印象的なできごとがあった。多方面で話題になったかもしれないが、2019年は「神」が生まれて、「言語」が生まれたと感じた年だった。神論文は、これである。``Complex societies...
Read More吉山くんのテンソルくりこみ群の論文が公開
テンソルくりこみ群による格子ガラス模型の相転移研究 Higher-Order Tensor Renormalization Group Approach to Lattice Glass ModelKota Yoshiyama, and Koji HukushimaJ. Phys. Soc. Jpn. 89, 104003 (2020) いろいろこの論文の解説を書きたい...またのちほど.
Read More西川くんの格子ガラス論文が公開!
格子ガラスの統計力学 フランス・モンペリエ大でPDをしている西川君の論文が公開されました.Yoshihiko Nishikawa and Koji Hukushima“Lattice Glass Model in Three Spatial Dimensions”Phys. Rev. Lett. 125, 065501 – Published 5 August 2020DOI:https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.125.065501 ガラスは汚い固体なのか?それとも,ネバネバした液体なのか? 一見,何を問いにしているのかわからない疑問かもしれない.日常で目にするガラスはカチカチの固体であって,おおよそ液体には見えない.しかし,原子スケールの目をもってガラスの詳細をみると,結晶のようなきれいな固体ではないことがわかる.ふと「カチカチ」の固体はどのように定義されるだろうかと考えてみると,謎が深まる.理系の大学生ならば,液体や気体にはない固体特有の性質は思いつくだろうが,もっとも素朴には「固まっているもの=固体」だろう.し...
Read More…大学生のみなさんへ2
こたえを示す前に宿題を出し続けてみよう.<=すみません.サボっています. 今日の問題は私の前期課程の講義でも説明する話題で,一度は悩んで欲しいところです.私の学生時代と違って,コンピュータが身近にあって,かつ情報もいろいろ出回っていて簡単に数値計算ができるようになっています.目の前に数値やグラフが現れて,いろんなことが納得しやすい気がします.ただ,ときに立ち止まって何ができていることになっているのか考えて欲しいと思うのです.簡単に納得しなくてもよいです. そんなに簡単に相転移なんてしないよ. 毎日,冷凍庫でできる氷はすごいと思う. 問題1問題1の解答例と問題2
Read Moreこ・た・え+
時間があいてしまったのですが,この問題の解答例を示します.難しい計算は何もなくて,積分して,対角化して...大学一年生で学ぶことをちゃんと使って,平衡状態での相転移を明らかにできます.基本的なこととして,大学院に行くまで知っておきたいところをまとめたいのだけど,まとめきれていない. 間違いがあったら教えて下さい. (2020.3.31)答えだけではつまらないので,次の問題を示します.(2020.4.2) 上の解答例の続きに,この問題に関連する事柄を最後に追加しました.
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