研究室の強みってなんですか?

研究室訪問に来た学生さんが帰り際に上記の質問をしてきた。

「そんなものはなんにもないなー」

ちょっと考えて、そう答えた。学生さんからすれば、研究室を選ぶ段階では貴重な情報だし、素直な質問だと思う。ただ、意表をつかれた質問だったし、本当に何もない気がしたから、素直に回答したわけである。

実験の研究室なら、世界でここにしかできない実験はあるかもしれないし、理論の研究室でも、世界でこんな解析できるのはここしかないというのもあるかもしれない。それに相当するものは福島研にはない。研究室が一丸となって、なにかの問題を解決することはない。私がビッグイシューを提示して、それにみんなでアタックするということもない。私の研究テーマの一部分が学生のテーマになることもまずない。ただ、全員が「統計物理学」の研究を行っていて、互いに緩やかにつながっている。だから、福島研は「〇〇がめちゃくちゃ強い」ということはありえない。研究室の主宰としては失格なのかもしれないね。

□□をやるならA先生は強いねとか、△△の分野はB先生がいいねとか、いろいろとコメントはできる。でも、それって、研究室ではなくて、研究室の主宰のことが多い。主宰の色が強いと、学生の独自色が出しづらいこともあるかもね。その意味で、私は物理をあんまりよくわかっていないので、色は弱弱です。そのこともあり、研究者として活躍している卒業生から福島色は感じないですね。「えっ、福島研出身なの。。。あーそうなの」って感じである。

私自身は、もう退官された高山一先生の研究室で大学院時代を過ごした。Takayama-LinLiu-Makiとか知らないで研究室を選んで、しかも超伝導理論とかグリーン関数の計算とかそのノウハウを一切獲得しないまま過ごしちゃた。一方で、スピングラスの教科書がちょうど大学院に入るころに書かれていて、スピングラスの平均場理論の検証などの丁寧な研究はしっかり勉強させてもらった(この本の書き出しはスピングラス現象から始まっていて、他のスピングラス解説よりも断然面白い)。高山先生の強いところを享受しないで出て行っちゃったなぁ。それでも高山研究室で本当によかったと思っているのよ。研究室を離れるときに、ある先生に「高山先生よりも高山先生っぽいよね」って言われて泣きそうになった。外から見たら、高山色に染まっているのかと思ってます。ご本人から言われたわけではないので、おこがましいのですけど。

というわけで、「強み」はございませんが、統計物理学を研究している国内では少ないタイプの研究室で、強いて言えば駒場っぽい研究室かと思うので、ご興味があればおしゃべりしましょう。

ちなみにサムネイル画像は、フランスでの夏の学校にいった学生さんたちからのお土産で、お気に入りアイテム。