今年も高校生理科研究発表会へ

千葉大学主催の高校生理科研究発表会は今年で13回.今年も審査に行ってきた.日本物理学会にも高校生の研究発表機会としてJrセッションがあるが,どうも話を聞くと千葉大学で物理学会があったときに千葉大が中心になってJrセッションをはじめたらしいです.確かに形式が似ている.

審査する数件の発表は聞いて,そのレポートを書いた後は,時間の限り発表を聞いて回った.高校生の発表への対応はいろいろと難しいこともあるが,結局は研究室の定例会での院生とのやりとりとあまり変わらない.思ったことと思いついたことはできるだけそのまま伝える.容赦はしないし,出し惜しみもしない.後者は教育的にはどうかなぁと思うこともあるかもしれないけど,こっちが思いついたことを黙っているのはどんな意味でも健全ではないし.

前半の最後で自分の審査外の発表を聞いたときことである.相変わらず誤差棒のないデータを見せられて主張どうこうのへったくれもないなーと,しかも,グラフのマーカーが◇マークに髭が生えててセンスないなーとも思っていた.ところが...

「これって何回測定したの?」
「60回です.その平均値をプロットしています.」
「ってことは,分散も計算できるよね.それはどうなってるの?」
「えーと,えーと,計算結果は...」
「だいたいどのくらいの大きさだったの.というか,計算したんだったら,誤差棒かけるよね.」
「あ..書いてあります!」
「えっ」

その髭みたいな横棒は誤差だったのです.それはちょっとこのデータの見え方がちがうじゃないか...というわけで,なんか何気なピークは有意なわけで,このデータについて俄然議論が盛り上がるわけです.最後には,これで次の実験が出来なかったっていうから,人生は有限だから,ここに60回かけるのはもったいないと,この誤差棒を見ながら次の実験に行くべきだと...こんな議論を高校生とできるのは幸せです.

あと,高校生に教えてもらったのは,パップス=ギュルタンの定理.「その定理はおかしい...こんな変態的な形をもってきたら成り立たないはずだ」といったのは大人げなかった.

私がこういう活動をつづけるのは,ガリレオ工房の滝川洋二先生の物理学会での特別講演を聞いたからです.「研究をこれからも続けたかったら,アウトリーチなど社会への接点にエフォートの5でも10でもかけなさい」と言われたのです.あの講演は忘れないです.